冒頭に赤ちゃんの発達をにぎるカギはみつめる目であることを述べましたが、そのことがおわかりいただけたでしょうか?
私がみつめる目に着眼するようになったのは、長年にわたる障害児教育を通して、みつめる目の働きに目が開かれたからです。
たとえ発達に問題があってもみつめる目が育つと子供自ら発達を図っていくようになることをたくさんのこどもからおしえられたからです。
ある2才の子供の例ですが、出会った当時は視線が合わない、言葉を話さない、衣服の着脱に関心がない、遊びらしい遊びができないなどの問題がありました。それがみつめる目が育つにつれて、問題が徐々に解決していきました。
人を見つめるようになったり、ことばがボツボツと出るようになったり、自ら衣服の着脱をするようになったり、友達の遊びを真似するようになりました。
こうした変化をもたらせたのは何かというと、療育によって子供にみつめる目が育ったからです。
みつめる目が育つと子供は人をみつめて人から学ぶようになります。人から学ぶことができるようになることによって子供みずからが発達の遅れを克服していくのです。
そこで私は赤ちゃんの発達を「みつめる目」という視点から考察しました。
そして赤ちゃんは発達のプログラムが備えられて生まれてきますが、その発達のプログラムの開花をバックアップするのがみつめる目であることが追究できました。
生まれて数日後には赤ちゃんは抱き手の顔を見つめてきます。
このみつめる目が、心身共に未熟で生れた赤ちゃんの発達をにぎるカギなのです。