『アイコンタクト子育て』とは

5.みつめる目が発達をバックアップする

⑤泣きと笑いとおかたり

赤ちゃんの発達をにぎるカギはみつめる目であることをお話ししましたが、赤ちゃんのことでもうひとつ知っていただきたいことがあります。

それは泣きと笑いとお語りです。

赤ちゃんが生まれた喜びは束の間で、その後は赤ちゃんのお世話にふりまわされます。なかでも「オギャーオギャー」の音声(呼気音)、いわゆる泣き声には翻弄されます。泣きたいのはママの方よと、言いたくなるほど「オギャーオギャー」の音声に泣かされます。そんな思いの中でママを慰めるのは赤ちゃんの微笑の表情です。

まるで天使の微笑のような表情を見ると、ママは日頃の忙殺を忘れて幸せな気分になります。更に赤ちゃんの口から出る「アー」や「ウー」のかわいい音声(お語り)はママの心に安らぎを与えます。

このようにママは泣きに泣かされ、微笑の表情とお語りにいやされてお世話に励みます。 そうこうしているうちに赤ちゃんはママの気持ちをよそに日に日に成長していきます。その成長を支えるのは何といってもたくましい赤ちゃんの生命力です。

たまにしか赤ちゃんを見ない人から「赤ちゃん大きくなったね」と言われると頑張りがむくわれたように思います。

さて、私は赤ちゃんの発達について考察を進める中で、生まれて3ヵ月間の泣きと、笑いと、お語りが発達の土台をつくることが追究できました。そのことをお伝えしたいのです。

とりわけこれから赤ちゃんを育てようとしている方や、赤ちゃんを育てている方にお伝えしたいのです。

 

・ 泣きと笑いとお語りの共通点

 

泣きとは赤ちゃんが「オギャーオギャー」の音声を出すこと、笑いとは赤ちゃんが口元をゆるめて笑いの表情を出すこと、お語りとは「アー」や「ウー」の小さい音声を出すことです。この三者は新生児期より出ます。

三者が新生児期より出るのは三者がいずれも呼吸の営みから産出するものだからです。

生まれて数ヵ月間は呼吸器官の機能が未熟であるために、呼吸のコンディションが乱れます。つまり、息苦しくなったり、呼吸が浅くなったりと呼吸のトラブルが起るのです。赤ちゃんは息苦しくなるとたくさん息を吐いて、たくさん息を吸うことをします。つまり、赤ちゃんは呼吸のピンチから脱しようと自助努力をするのです。

この時に喉頭の声帯の振動が起り「オギャーオギャー」の音声がでます。赤ちゃんが全身に力を入れ、目に涙をためて、顔を赤らめて発する「オギャーオギャー」の音声が、人々には切なく聞こえるのは、息苦しさからでる音声だからです。「オギャーオギャー」の音声は呼気音なのです。

呼気音にもかかわらず赤ちゃんが「オギャーオギャー」の音声を出すと、人々は泣いていると言います。人々が泣いていると思うのは、赤ちゃんが「オギャーオギャー」の呼気音を出す時の表情です。その表情が泣き顔に似ているので、泣いていると思うわけです。

次に笑いですが、抱っこをされている時、赤ちゃんは抱き手の顔をじーっと見つめていると、息をつめてしまい呼吸が浅くなります。すると赤ちゃんはいつもよりも多目に息を吐いて多目に息を吸うことをします。これも浅くなった呼吸から脱するための自助努力です。

この時に口角が左右に引けて口唇がU字形となります。赤ちゃんの表情が笑っている時の表情に似ているので、人々は笑っていると思うわけです。

次にお語りですが、お語りは微笑と同様で呼吸が浅くなると赤ちゃんはいつもよりも多目に息を吐い従って、多目に息を吸うことをします。この時に「アー」や「ウー」の小さい音声が出ます。従って「アー」や「ウー」の音声は呼気音です。この時の表情はいつもと変わりません。しかし人々には赤ちゃんが何かを語っているように思わされます。

このように三者はいずれもまだ呼吸がしっかりできないという弱点から産出するものです。

三者は呼吸の営みから産出すものですので、すべての赤ちゃんに出ます。

しかし残念なことに三者が呼吸の営みから産出するものであることが認識されていません。もし、認識されていたら泣きや笑いやお語りについての解釈は違ったものとなっていたことでしょう。

では三者はどのように展開するのでしょうか?

 

  • 三者の内なる成長

 

「オギャーオギャー」の音声や微笑の表情や「アー」や「ウー」の小さい音声は、呼吸の営みから産出するものですから呼吸器官の機能の向上に伴って変化が出ます。

赤ちゃんは月齢が進むにつれて、呼吸が深くなるのでそれにともなって変化がでます。つまり、月齢が進むにつれて新生児期の「オギャーオギャー」の音声は、だんだんとおおきくなり、3ヵ月頃には家の外まで聞こえるようになります。

新生児微笑は、1ヵ月の時は微笑んでいる表情となり、2ヵ月頃にはニッコリの笑い顔となり、「キャッ」という笑い声も出るようになり、3~4ヵ月頃には「キャッキャッ・アハハハハ」と声を出し、笑うようになります。

新生児期の「アー」や「ウー」の音声は、1ヵ月頃には「アーウー」となり、2ヵ月頃には「アーウーウックン」となります。3ヵ月頃には「アーウームニャムニャウックンブェ―」となります。つまり、音声が長く出るようになります。こうした変化は外見上のものですので、誰にでも認識できます。

外見上の変化に人々は成長を覚えるものですが、三者には内なる変化が起っています。

それは本来、無意識である「オギャーオギャー」の音声や微笑や「アーウー」の音声に、欲求や意思がふきこまれて、3~4ヵ月頃になると欲求や意思を伝える泣きや人をひきつける笑いや欲求を伝えるお語りへと成長することです。

たとえば、赤ちゃんは空腹を覚えるとオッパイが飲みたい欲求を伝えるために、意識して「オギャーオギャー」の音声を出すようになります。これが欲求を伝える泣きです。

母親とひと遊びをした後に、もっと遊んでーといわんばかりに、ニコニコ笑いかけてくるようになります。これが人をひきつける笑いです。

また、赤ちゃんに「オーンオーントトトトバー」と話しかけると、話しかけに応えて「アーウーアー」と声を出して応答するようになります。これが欲求を伝えるお語りです。ではこうした内なる変化はどうして起こるのでしょうか?

それは赤ちゃんに学ぶ力が秘められていて体験から学ぶからです。赤ちゃんには生まれつき五感が備えられています。この五感の働きによって学ぶのです。

なかでもみつめる目の働きは大きいです。

 

 

・欲求を伝える泣き

赤ちゃんはお腹が空くと、「オギャーオギャー」の音声を出します。「オギャ―オギャー」の音声を出すと、お腹が空いたのかなと思って親はオッパイを飲ませます。

「お腹が空く→オッパイを飲ませてもらう」という体験がくり返されることによって

赤ちゃんはオッパイが飲みたい時は、「オギャ‐オギャー」の音声を出せばよいことを学びます。3ヵ月頃になると空腹がわかるようになるので、オッパイが飲みたくなると、その欲求を「オギャーオギャー」の音声を出して伝えるようになるのです。

これが欲求を伝える泣きです。

 

・人をひきつける笑い

3ヵ月頃の赤ちゃんを喜ばせる遊びといえば、イナイイナイバーです。

母親がイナイイナイバーの遊びをすると、赤ちゃんは「キャッキャッアハハハハ」と声を出してはしゃぐようになります。

赤ちゃんがはしゃぐので、もっと楽しませてあげたくなって母親は度々イナイイナイバーをするようになります。期待通りにはしゃぎ反応が返ってきます。母親は嬉しくて度々「イナイイナイバー」をの遊びをしてしまうはめになります

赤ちゃんは笑うと母親が「イナイイナイバー」をくり返してくれる体験から、笑うと人をひきつけることを学びます。

すると赤ちゃんは母親が「イナイイナイバー」をやめると、母親の方をみつめながら赤ちゃんはニコニコと笑いかけます。

又、父親や母親を見ると赤ちゃんは「ニコニコキャッキャッ」とありったけの笑顔をふりまくようになります。

これが人を引きつける笑いです。

 

・ 欲求を伝えるお語り

赤ちゃんが「アーウー」とお語りをすると、人々はお語りに応えて何らかの対応をします。たとえば、赤ちゃんが母親を見つめながら「アーウー」と甘えるように声を出すと、抱っこをしてあげたり、赤ちゃんが飾り物を見つめながら「アーア―」というと、「きれいだね」と言って一緒にながめたり、母親を見つめながら「アーンアーン」と言うと、母親はヨシヨシと優しく返事を返します。

こうした体験から赤ちゃんはお語りで欲求や意思を伝えることができることを学びます。これが欲求を伝えるお語りです。

 

・三者の使い分け

赤ちゃんは欲求を伝える泣きや人をひきつける笑いや欲求を伝えるお語りを習得すると赤ちゃんはそれらを盛んに出すようになります。

たとえば、母親と目が合うと抱っこを期待して、ニコッと笑いかけます。母親が「~ちゃん」と言っただけで抱っこをしないでいると、赤ちゃんは母親をみつめながら抱っこを欲求して「アーウーウェーンブェー」とお語りをします。

それでも抱っこをしてもらえないと、待ちきれなくなった赤ちゃんは、抱っこを欲求して「エーンエーン」と甘えるように泣き始めます。

泣き始めるとさすがの母親も赤ちゃんに負けて抱っこをするはめとなります。

赤ちゃんは願いが叶えられて満足します。

このように赤ちゃんは三者を上手に使い分けて意思や欲求を伝えるようになります。

赤ちゃんが泣きや笑いやお語りで自分の欲求や意思を伝えるようになると、人々は

泣きや笑いやお語りに応えざるをえなくなります。

さて、社会性の発達には外面的な関わりと内面的な関わりがあることを前述しました。では、意思や欲求を伝える泣きや人をひきつける笑いや欲求を伝えるお語りは、どちらかというと内面的な関わりをもたらします。

なにしろ赤ちゃんが抱っこして―と泣くのですから、赤ちゃんの求めに応じないわけにはいきません。赤ちゃんがニコッと笑いかけてくるのですから無視することができません。私のお語りを聞いてちょうだいと声を出すのですから,聞き流すわけにはいきません。

こうしたことからわかることは、欲求を伝える泣きや人をひきつける笑いや欲求を

伝えるお語りにおいては、内面的な人との関わりが起ることがわかります。

ところで、赤ちゃんには脳の発達を図るというお仕事が課せられています。

脳が発達するを図る上で必要なものは、外界からの情報です。その情報はより豊かであることが求められます。この情報を豊かにするのが人との関わりです。

そこで活躍をするのが欲求を伝える泣きや人を引きつける笑いや欲求を伝えるお語りの習得には、内面的な関わりをもたらします。赤ちゃんは内面的な関わりをとおして情報を豊かに入手するようになります。この豊かな情報は脳が発達を図っていく糧となります。つまり、三者の欲求を伝える泣きや人を引きつける笑いや欲求を伝えるお語りが知恵を育むことをバックアップするのです。

こう考えると三者を習得するまでの3ヵ月間のお世話がどんなに大切であるかがわかります。

「オギャーオギャー」の音声や「微笑の表情」や「アーウー」音声への対応です。

特に三者の中で最も大切なとりくみは「オギャーオギャー」の音声の対応です。

なぜなら、オギャーオギャーの音声を出すことからアイコンタクトや笑いやお語りが

ひき起こされるからです。

「オギャーオギャー」の音声(呼気音)の一連の流れは次のとおりです。

赤ちゃんが「オギャーオギャー」の音声(呼気音)を出す→抱っこされる→「オギャーオギャー」の音声(呼気音)がおさまる→深い腹式式呼吸となる→アイコンタクトが出る→笑いとお語りがでる。

先人は「赤ちゃんが泣くことがお仕事」というすばらしいことばを残してくれています。

「オギャーオギャー」の音声を出すことから赤ちゃんの発達は始まります。

つまり「泣く子は育つのです」

 

脳の発達

赤ちゃんには脳の発達を図るというお仕事があります。脳が発達を図る上で必要なものは、外界からの情報です。その情報はより豊かであることが求められます。その豊かな情報をもたらすのは、人との関わりです。

赤ちゃんはひとりぼっちでいたら限られた情報しか入りません。

さて、社会とは人との関わりですが、社会性には人との関わりにおいて外面的な関わりと内面的な関わりがあります。

外面的な関わりとは、人の領域にふみこまない関わりであり、内面的な関わりとは、人の領域にふみこんだ濃い関わりです。

たとえば、友達関係で同じクラスの友達づきあいは外面的な関わりです。それに対して親友とのつきあいでは内面的な関わりが生じます。

近所づきあいや職場でのつき合いなどは外面的な関わりです。しかし、その中でも特に親しく心を許してつき合う場合は、内面的な関わりが生じます。

それでは赤ちゃんの場合はどうでしょうか?

赤ちゃんはお世話をされなければ生活できません。お世話はお世話をしてくれる人との外面的な関わりが起ります。しかし、更にふみこんで赤ちゃんがお世話をしてくれる人を受け入れた時に内面的な関わりが生じます。この内面的な関わりに、最たる関わりをするのがアイコンタクト、即ちみつめる目です。

実は、欲求を伝える泣きや欲求を伝えるお語りや人をひきつける笑いは、内面的な関わりをひき起こします。それは赤ちゅんに人と関わろうとする気持ちがあるからです。

求める人との関わりですから内面的に関わることが生ずるのです。

その内面的な関わりは何をもたらすかというと、関わった人からの情報の入手です。

こうして入手した情報は脳に送られ、脳が発達を図る糧となります。

こう考えると、欲求を伝える泣きや欲求を伝えるお語りや人ひきつける笑いを習得するまでの3ヵ月間が知恵の土台を育むことがわかります。

発達の遅れを早期に発見するという考えではなく、まず3ヵ月頃までに内面的な人との関わりが育っているか否かを考察することです。

その上で、内面的な関わりが稀薄であったり、人との関わり方に問題があっても、まだ3ヵ月ですから早期に改善を図ることが出来ます。

お願い!

私のホームペイジをご覧の皆さんに声を大にして伝えたいことは、赤ちゃんが泣いている可哀そうではなく、「オギャーオギャー」の音声は呼気音であることを認識していただき、「泣く子は育つ」という思いで子育てをしていただくことを願っています。

所長より

私は60年余り幼児の障害児教育に携わってきました。

 

さまざまな障害児の療育に取り組みながら、乳幼児の発達について考察、問題に対する適切な対処の仕方を現場での実践を通じて学んできました。

 

目が合わない、話しかけても反応しない、何かのきっかけでパニックを起こす等は自閉傾向のサインです。

 

赤ちゃんの発達について悩まれたらお気軽にご相談ください。

 

「アイコンタクト子育て支援研究所にじのわ」では、子育て全般に関する相談を行っています。

 

発達障害や自閉傾向のお子さんの療育・相談は「こども発達支援ホームいわしろ」で受付けています。

 

どちらもお問合せは「こども発達支援ホームいわしろ」に、お気軽にお電話ください。

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